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人の視線が気になったら… ~自意識過剰から脱却するには~
自意識過剰になる理由
友人に嫌われているような気がするとか、人からどう思われているのか気なるといった相談を受けることがあります。思春期になると自意識(自分に対する意識)が高まってくることで、自分の外見や性格など、それまで気にならなかったことが気になってくることがあります。そして、自意識が過剰になってくると、まるで“視線ビーム”を受けているかのように、ジリジリと周囲の視線を冷たく感じ、緊張しやすくなる人もます。
しかし、自意識の高まりによって自分自身を客観的に観察することができれば、自己理解を深めることができますし、良い所や悪い所を見つめ直すことによって、人間的に成長することもできます。思春期における自意識の高まりは、子どもから大人になる過程で、自ら総点検することによってバージョンアップをはかっていると言えます。
メタ認知で学力アップ
自分自身のことを客観的に見る能力のことを心理学では「メタ認知」と言います。メタとは「高次の」という意味です。より高い次元で、より高い視点から自分を認知すること、認知している自分を認知するということです。
ベネッセの調査によると、メタ認知能力が高く、客観的に自分の学習を振り返られる人ほど、成績が高い傾向が見られるそうです。勉強ができる人は、ただやみくもに勉強するのではなく、どうやって勉強するのが効率的で効果的なのか、どうすればモチベーションを高められるのかなど学習との向き合い方がわかっています。どこが重要で何がわかっていないのか、やり方がうまくいっているのかなどの振り返りができているのです。
つまり、自分の性格や能力の長所や短所、得意・不得意など、自分自身のことがわかっている人ほど、自分の持ち味を発揮できるようになります。自意識の高まりを活かすことで学力や魅力のアップにつなげることができるのです。
自己愛(ナルシズム)とは
人間関係においては自意識が強いと、人に言われたちょっとしたひと言が気になったり、人によく思われようとして空回りしたりすることがあります。自分をよく見てもらおうと気にしすぎる人のことを「ナルシスト」と言われることがありますが、自意識の高まりは、ナルシズムとも関係しています。
ナルシズムは自己愛と訳され、自分を愛する気持ちのことを言います。ギリシャ神話に登場するナルキッソスが池に映った自分の姿に恋して、満たされぬ思いに、やつれ果ててしまうというエピソードに由来しています。自己愛が強すぎて自分に酔ってしまうと、自分で自分をダメにしてしまうわけです。
自己愛から対象愛へ
ですから、そういうときは「自己愛」を「対象愛」に変えてみるのがお勧めです。愛情を自分にではなく他人に向けてみることです。たとえば、自分が書いたイラストを友人に見せてほしいと言われたとき、バカにされたらどうしよう、恥をかいたらどうしようと、自己愛が傷つくのを恐れていると、見せたくなくなります。しかし、そのイラストを見せることで、相手が喜ぶならば見せてみるのが対象愛と言えるかもしれません。
そうやって、自分に向かっていた愛情や意識が他人に向けられるようになると、他人が喜び、感謝してくれるようになってきます。そして、肯定的な目で見てくれるようになれば、そんな自分のことがだんだん好きになってくるでしょう。
自分が人からどう思われているかという利己的な視点ではなく、どうしたら世のため人のためになるのかという利他的な視点でとらえられると、自意識過剰がやわらいできます。そして、視線ビームのように冷たく感じられていた周囲の視線が、自分を見守ってくれる温かいまなざしに変わってくると思います。