ホーム ≫ 相談室便り バックナンバー47 ≫
情報化社会の歩き方
米国の大統領選挙では両陣営から様々な情報が発信され、その情報の真偽の見極めが求められていましたが、学校生活においても不確かな噂や悪口がSNSや人づてに広がり、トラブルになることがあります。誤った情報が独り歩きすれば、社会も友人関係もおかしな方向に進んでしまいますね。情報化社会において平和な道を歩んでいくためのメディア・リテラシー(情報を読み解く能力)はどうすれば身につくのでしょうか。
二つ以上のストーリーを聴くこと
ある情報を人に信じ込ませるためには、閉鎖的な環境を作って、その情報を繰り返し刷り込ませていくという方法があります。なおかつ、不安や恐怖に働きかけられれば立派な洗脳になってきます。他に相対的な判断基準がないと、その情報だけを絶対視してしまい、なおかつ不安や恐怖を感じているときは、わらにもすがる思いで信じやすくなるのです。
飛行機は右翼にも左翼にも傾いていては目的地までまっすぐ飛べないように、それぞれの言い分を比較検討しながらバランスを取ることで、真実へとたどり着くことができます。
真実は二つ以上のストーリーを聴かなければわかりません。様々な情報を天秤にかけながら、一番重みのある情報はどれなのか確かめていきましょう。
立場が人を作る
心理学ではある部分の印象が他の部分の印象に影響することをハロー(後光)効果と言います。たとえば、自分が好意を持っている人が発している情報は、他の人が同じことを言っていても、より肯定的に受けとめる傾向があります。大手の新聞社が書いているから、有名な大学の教授が発言しているからと、必ずしも権威のある立場にいるから正しいとは限りません。
メディアはスポンサーが嫌がることは伝えにくいように、どの人も自分の立場からものを言い、自分の不利益になることは言わない傾向があります。つまり、立場が人を作っているわけです。伝える人がどのような立場から発信しているのか、思想や利害関係などの背景を差し引きして判断してみるといいでしょう。
疑うことと信じること
そうやってどこの誰がどういう意図でその情報を発信しているのかが明らかになってくると、その情報の全体像がつかめてきます。石橋は慎重に叩いてみることでその強度がわかるように、情報も慎重に疑ってみることで正確さがわかってきます。
しかし、疑心暗鬼になっているだけでは信頼できる情報は見つかりません。どんな健康法でも信じて取り組まないと効果が出にくいように、信じることでその情報が活きてきます。そこで、天気予報のようにその情報が当たっている確率は何%くらいなのか、白か黒かで真偽を決めずに、信じられる度合いを確率論でとらえる柔軟性を持てるといいかもしれません。
人の目を見る
以上のように情報の読み解き方が身についてきても、やはり直接会って情報を受け取ることが大切になってきます。文字や映像で得た知識だけではなく、現実に何が起きているのかを肌で感じてみるのです。実際に現地で見聞きした情報は心でキャッチすることができます。
また、その情報を発信している人の人柄で判断してみるのもいいでしょう。人格や人間性といっても、その姿勢やふるまい、表情などに表れてきます。そして、強いてあげるならば目です。心理的な技術の一つに相手の真意や嘘を目の動きで見極める方法があるように、人を見る目のある人は「人の目を見る目のある人」と言えるかもしれません。
キャッチした情報を活かすも殺すも読み解き方次第です。いろんな見方を味方にできれば信頼できる情報を見つけやすくなります。そして、その情報を発信している人との信頼を深められれば、人生を歩んでいく上での本当の味方ができると思います。