相談室便り バックナンバー52
これからの時代に必要な「敏感力」 ~HSPを活かすには~
HSPって何?
皆さんはHSPという言葉を知っていますか?ここ数年「自分がHSPなんじゃないか?」という相談を受ける機会が増えてきました。HSPとはハイリー・センシィティブ・パーソン(Highly Sensitive Person)の略で、非常に敏感な気質を持った人たちのことを言います。N・アーロン博士によって提唱されました。
HSPの傾向がある人は、場の空気や人の気持ちを読み取る能力が高く、共感性にも優れています。しかし、外部からの刺激に敏感であるがゆえに、気疲れしてしまう人も少なくありません。
HSPに関する書籍が出たのはずいぶん前ですが、近年になって本屋で平積みにされ、関連本が売れるようになったということは、ストレスを敏感に感じて困っている人が増えているからかもしれません。敏感であることに困ったとき、どのように向き合っていけばいいのでしょうか。
情報の整理をしよう
感受性が強いということは、高性能の集音マイクや高感度のアンテナを備えているようなものかもしれません。周囲の騒音やちょっとした一言が気になったり、相手の何気ない表情から気持ちを読み取とったり、あらゆる情報を拾い上げることができます。
ところが、それだけ情報を敏感にキャッチできるということは、心のメモリから情報が溢れてしまったり、情報量の重さに押しつぶされそうになったりすることがあります。
そのように心が疲れてしまったときは、スマホに触れる時間を減らしたり、人に会う機会を減らしたりして、情報を遮断してみること。刺激の少ない時間と空間を作ることがお勧めです。また、思っていることを書き出したり、人に話したりして、蓄積した情報をアウトプットしてみます。溢れた情報を整理することで、心のメモリを回復させましょう。
HSPは諸刃の剣?
敏感な人は切れ味のするどいすばらしい武器(感性)を持っているがゆえに、その使い方を誤れば自分自身が傷ついてしまうこともあるかもしれません。その能力は、諸刃(もろは)の剣のようです。
有名な芸術家や哲学者、作家の中には感受性が豊かで敏感な人は少なくありませんでした。たとえば、国語の教科書にも出てくる夏目漱石は、神経質な性格で気に病むことがあったといいます。彼は明治以降に欧米から輸入されてきた個人主義によって、日本人の倫理観が崩壊してくことへの葛藤や危機感を作品『こころ』の中で描きました。敏感であるがゆえに人々の心理や時代を描写する力があったのかもしれません。
敏感な人は心の琴線に触れることができます。物事の本質を見抜く力になります。たとえ心が傷つくことがあっても、その武器を活かすことができれば、新境地を切り開くことができます。
これからの時代に必要な力
近い将来、AIやロボットが人間にとって代わり、今ある仕事がなくなってくる問題が懸念されています。しかし、敏感であるがゆえの空気を読む力、繊細であるがゆえのきめ細かい作業は、AIやロボットが苦手としている能力でもあります。これからの時代に求められる新たな仕事は、これからの時代を生きる皆さんの敏感力がきっと見つけてくれます。
敏感な人はいろんなことが気になってきますが、気=情報と言ってもいいと思います。気になるのは情報をキャッチしているということ。それだけ情報収集能力があるということです。そこで、ポジティブな情報(気)を集められれば、気力が高められて、人を元気にすることもできます。そんなポジティブな敏感力を磨いていけたらいいですね。