相談室便り バックナンバー54
いいんだよ ~自己肯定感を育むセルフトーク~
自己肯定感が低くなると
自己肯定感を高めるにはどうしたらいいですか?という質問をされることがあります。自己肯定感が低くなる人の傾向として、自己肯定とは反対の自己否定を無意識のうちに繰り返してしまっていることがあります。些細な失敗でも「何でこんなこともできないんだ」と自己嫌悪に陥ったり、「だから私はダメなんだ」と自分を責めたりしてしまいます。
そのような心の中での独り言、セルフトーク(自己会話)を繰り返しているうちに、だんだん自己肯定感が低下し、自信や気力もなくなってきます。休んでいるときでも心の中で自己否定を繰り返していると、身体は休めても心は休まりません。
繰り返される「一人裁判」
自己否定というのはいわば自分で自分にムチを打っているようなものかもしれません。馬車馬のように働き続けるために、ムチを打ってやる気を奮い立たせようとしても、毎日のように打たれ続けていれば疲弊してしまいます。
自分にムチを打つきっかけとしては、日々の行いを善悪で裁いている癖があるようです。あの発言はよかった、あの行動は悪かったと自分で自分を裁いてしまいます。そのような「一人裁判」を心の中で繰り返し、ダメ出しでムチ打ちの刑を自らに科してしまうことが、自己肯定感を下げる要因なのかもしれません。
自己肯定感を育むには
自己肯定感を育むコツは、一人裁判という善悪で自らの行いを裁く習慣をやめて、否定も肯定も肯定し、ありのままを今ここで認めてあげることです。馬車馬にムチを打つのではなく、なでてあげるようなイメージです。
キリスト教ではアダムとイブが禁断の果実(善悪を知る木の実)を食べてしまったことで罪を背負うようになったと考えられています。仏教では苦しみからは逃れられないのに苦しみを取り除こうとすることで煩悩を抱えるようになったと考えられています。日々の行いを善悪で裁いたり、執着したりすることをやめて、ありのままを認めることができると罪悪感や苦悩から解放されるということです。
究極の自己肯定とは
ありのままを肯定することの大切さに気付けるようになっても、「また自分を否定してしまった」と否定した自分を否定することで、自己否定のループにはまってしまいます。
たとえば、落ち込んでいる人を見ると「元気出しなよ!」と励ましたくなりますが、落ち込んでいる状態を否定されることで、余計に元気をなくさせてしまうことがあります。そういうときは「気分が落ち込んでいるんだね」とありのままを肯定して共感してあげたほうが元気づけられるかもしれません。
究極の自己肯定とは否定している自分も肯定すること、認めてあげることです。ネガティブな自分に対しても、ありのままを認めて「いいんだよ」というセルフトークができるようになると、だんだん自己肯定感や自信が高まってくると思います。