相談室便り バックナンバー61
動いていれば悩まない
~溢れる情報はシャットアウト&アウトプット~
ストレスがたまる理由
猛暑が続くと涼しい部屋でスマホを見ながらゴロゴロしたくなりませんか。やる気が出ない原因は夏バテだけではなく、日常生活で溢れるほどの情報を浴びることで「心のメモリ」がいっぱいになっていることが挙げられます。ポジティブな情報をインプットする分にはよいですが、SNSの誹謗中傷や友人に言われたちょっと気になる一言、通学中の満員電車など、様々な刺激がネガティブな情報としてインプットされてくると、心のメモリはいっぱいになってしまいます。
特に、敏感な人ほど高感度のアンテナのように様々な情報をキャッチできるので、キャパオーバーになりやすいかもしれません。ネガティブな情報でいっぱいになってしまったときはどのように処理したらよいのでしょうか。
シャットアウトする
情報のインプット(入力)は感覚系の回路なので、見聞きしただけで入ってきます。不機嫌な人を見る、人の悪口を耳にする、悪臭を嗅ぐ、人ごみで身体が接触する、炎天下で直射日光を浴びるなど、インプットする情報は感覚的に瞬時に入ってきます。
ですから、ネガティブな情報を入れないためには、見ない、聞かない、嗅がない、触らないのが一番です。心を休めたいときは、物理空間においてなるべく距離を取って情報を遮断してみます。
しかし、スマホが不可欠になった現代では、情報空間においても次から次へと様々な情報が着信音、バイブ音とともに、SNSやネットを通じて入ってきます。ストレスが溜まっているときにネットゲームや動画観賞で発散させようとする人もいますが、その高揚感で気分をまぎらわせることはできても、インプットが続けば心は休まりません。
気疲れしたときは、スマホ断ちして(デジタルデトックス)、情報を入れない時間と空間を作って自らを「退屈の刑」にさらせるといいかもしれません。
また、断るのが苦手な人ほど、多くの頼まれごとを抱え、愚痴の聞き役にもなりがちなので、No!と言ってシャットアウトする勇気を持ちましょう。
アウトプットする
その昔は夜になれば辺りは暗くなり、脳を覚醒させる刺激音は少なく、自律神経(緊張とリラックス)の切り替えができ、心を休めることができました。しかし、電化製品に囲まれた現代では、電灯の明かりだけではなく、TVやスマホからも様々な情報がインプットされるので、日頃からアウトプット(出力)する習慣が求められます。
アウトプットは運動系の回路が使われます。気分転換に散歩やスポーツをする人は手足を動かしていますし、カラオケやおしゃべりで発散している人は口を動かしています。気持 ちを整理するために日記を書くときは手を動かしています。つまり、情報をアウトプットするには、身体を動かすことがポイントになるのです。
悩んでいるときほど立ち止まって、頭の中でやりくりしがちですが、それではアウトプットできません。シャットアウトして心を休ませ、心のメモリがある程度回復してきたら、アウトプットする習慣を身に着けることでポジティブな循環ができてきます。
行動を活性化する
嫌なことを避けて一時的に安心感を得ようとすることを「回避行動」と言いますが、その場しのぎの行動は返ってストレスが溜まりやすくなります。悩んでいる時ほど横着せずに身体を動かす「対処行動」が求められるのです。
誰かに相談するのはもちろんですが、身体を動かすのが苦手な人でも、指を使ってギターを弾く、絵を描くのを楽しむことでもいいです。とにかく身体が心地よいと感じられるように、のびのびと自由に動かしてみます。そのようにポジティブな行動を取り続けることで、気分を変えるアプローチを「行動活性化療法」と言います。
転がる石に苔は生えません。動き続けていれば立ち止まって悩むことが少なくなり、目的に向かって集中していれば、ネガティブな情報をキャッチしにくくなります。そして、その目的に関連したポジティブな情報が入ってきやすくなります。夏バテで動きが鈍くなったときほど、アウトプットを意識して、ポジティブな対処行動ができれば、さわやかな汗とともに心は軽くなると思います。