相談室便り バックナンバー65
やめられない止まらない
~デジタル依存から抜け出すには~
デジタル依存
今の時代、スマホは手放せないものになりましたが、勉強したくてもついついスマホを触ってしまい、気が付いたら何時間も動画を見続けていた。深夜までゲームに没頭していたという話は後を絶ちません。
皆さんの親も中高生の頃は「何時までテレビを見ているの!」「いいかげんにファミコンをやめなさい!」と注意された方は少なくないと思います。しかし、ラジオ、テレビ、ポケベル、ガラケー、スマホと、文明の進化とともにデジタル依存も深化しているようです。
スマホの使用を注意されるのはいい気がしないでしょうが、デジタル機器の生みの親の一人であるアップルの創業者スティーブ・ジョブズが、スマホを子どもには使わせなかったというのは有名な話です。なぜ、ジョブスは子どもに使わせなかったのでしょうか。
依存のメカニズム
スマホは多くの情報を取り込む知識の宝庫になり、交友関係を拡げる社交の場にもなります。ただし、デジタル機器によってやるべきことがやれなくなり、それ以外に楽しみがなくなって日常生活に支障をきたしているのだとしたら、「依存症」という段階に入ってきます。
デジタル機器によって快感を得られると、脳内からドーパミンが出ます。ドーパミンは勉強やスポーツなど何かを一生懸命頑張って達成感や充実感を得られる、いわば「努力のご褒美」です。スマホゲームで勝ちあがるのも努力はいるかもしれませんが、お酒や薬物、ギャンブルなどと同様にあまり身体を動かすことなく、簡単にドーパミンを出すことができます。
そして、やりたいことが見つからず、ぽっかりと心に穴が開いたような空虚感があるときやストレスを抱えているときほど、ドーパミンを出すことで気分を高揚させようとしがちです。安易にドーパミンを出すことはストレスを解消しているというより紛らわしているとも言えます。依存の根底にある本質的な課題と向き合うことから目をそらしてしまうからです。
設計された行動嗜癖(依存)
「僕らはそれに抵抗できない~依存症ビジネスのつくられかた~」の著者、心理学者のアダム・オルターによると、テクノロジーは未曾有の中毒を持つように進化し、デジタル依存のパンデミックが起きていると言います。
通知やいいねボタン、ランダム報酬、無限スクロール、コンテンツの自動再生など、そこにはやめられない仕組みがあり、自己制御が弱いというよりも環境要因のほうが強くなっています。人は「自分は自分の意志で動いている」と信じていますが、デジタル依存は無意識の環境や文脈によって誘導されている環境の産物であると言うのです。
企業によって精密に設計された購買アルゴリズムによって、自分の行動の多くを環境要因に無意識に支配されているのだとしたら、通知を切る、アプリを削除する、スマホを寝室に置かないようにするなど、デジタルデトックスするための環境整備が求められます。それでも、連絡手段や学習に使うこともあるので、ついついスマホに手を伸ばしてしまいます。
依存から抜け出すには
そこで、まずは依存のメカニズムを俯瞰してみることが大切です。無限ループにはまっている自分をもう一人の自分が声をかけるように、ゲームに没頭している自分をメタ認知(客観視)してみます。どんな気分の時に、どんな状況で没頭しているのか、ありのままの自分をよく観察します。
次に、情報空間から抜け出し、ありのままの物理空間を体感できるようにします。デジタルで使う視覚と聴覚ばかりではなく、嗅覚や味覚、特に触覚を大切にし、情報を足で探し、肌で感じることで、今ここに立ち返ることができます。依存状態のときは惰性と横着して使っていることが多いので、スマホを使う目的と行動をできるだけ明確にします。
そして、動画作成やゲーム制作をするように、やりたいことをやるためにデジタル機器を活用します。仮想空間を日常がうまく行かないときの逃げ場にするのではなく、叶えられないことをより叶えるための拡張の場にするのです。
スマホに溺れるのではなく、情報の大海原を自由に泳ぐための道具にできたら、依存していたスマホは自立のための頼れるパートナーに変わってきます。デジタル機器によって、受動的に消費する側ではなく、主体的に生産する側になれたら、未来のスティーブ・ジョブスになれるかもしれません。