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情報化社会の歩き方
テレビやインターネットに流れる情報は真実なのでしょうか? LINE上に書かれている友達の噂は本当なのでしょうか? インターネット上のやりとりによって、人の心を傷つけてしまうことや誤解が広がってしまうことがあります。
しかし、その一方で、世界中の人々の絆をつないだり、隠蔽されていた事件を明るみにしてくれたりすることもあります。よくも悪くも氾濫する情報はどのように整理してどのように受けとめればいいのでしょうか。今回は心理学的見地から、情報の受けとめ方について書いてみたいと思います。
二つ以上のストーリーを聴く
ある情報を人に信じ込ませようと洗脳するための手段として、閉鎖的な環境を作り、なおかつ一つの情報しか与えないというやり方があります。他に相対的な判断の基準がないと、その情報だけを絶対視してしまうようになります。飛行機を操縦していて、右翼にも左翼にも傾いていては、まっすぐ目的地まで進めないように、両方の言い分を聞いて比較検討しながらバランスを取ることで、真実へとたどりつくことができるわけです。
たとえばニュースを見ていても、歴史認識や原発問題など様々な情報が流れていますが、何がどの程度正しいのかを見極めるためには、一つの情報だけを鵜呑みにしないことが大切です。真実に近づくには二つ以上のストーリーを聴くことから始まります。
立場が情報を作る
心理学では、ある部分の印象が他の部分の印象に影響することをハロー(後光)効果と言います。たとえば自分が好意を持っている人が発している情報は、他の人がたとえ同じことを言っていても、より肯定的に伝わるようになります。大手の新聞社が書いているから、有名な大学の教授が発言しているから、権威があるからといって必ずしもその情報が正しいとは限らないのです。
メディアはスポンサーが嫌がることは伝えにくいように、どの人も自分の立場でものを言い、自分の不利益になることは言わない傾向があります。つまり、立場が人を作り、その人から情報は発せられます。情報を受け取るときは、伝える人がどのような立場にいるのかを差し引きして判断してみるといいでしょう。
疑うことと信じること
そうやってどこのだれがどういう意図でその情報を発信しているのか考えることで、その情報の信憑性がわかってきます。石橋を叩いて渡ると言うように、慎重に叩いてみることで石橋の強度がわかりますが、情報は慎重に疑ってみることで正確性がわかります。
しかし、疑心暗鬼になってばかりでは、その情報からはネガティブな受けとめ方しかできず、活かすことができなくなります。どんな健康法でも信じて取り組まないと効果が出にくいように、信じることも必要になります。
そのような時は確率論的に捉えてみるのをおすすめします。たとえ、その情報が100%絶対に正しいとは言い切れなくても、100%に近づくことはできます。心理学では統計学を多用しますが、天気予報のようにその情報が当たっている確率は何パーセントというように、白か黒か真偽を決めつけず、自分の中で信じられる度合いを確率論でとらえる柔軟な姿勢を持てるといいかもしれません。
人の目を見る
以上のように情報の見極め方が身についてきても、やはり直接会って情報を受け取るのが一番です。経営者でも政治家でも大成した人は、行動力がありなおかつ実際に人から直接情報を得ようとする人が多いようです。本で得た知識や人づてに聞いた話だけではなく、実際に五感で得た情報は、よりリアリティをもっているので生きた情報として活かすことができます。
それでも調べる時間がない、限られた中から情報を選ばなければならないとき、判断できるのは、その情報を発信している人の「人柄」で判断してみます。人格や人間性と言ってもその服装や姿勢、ふるまい、言動などに表れるものですが、強いてあげるならば目です。心理テクニックの一つに相手の真意や嘘を目の動きで見極める方法があります。目の反応を見て、悩みを言い当てたように思わせるテクニックを使う占い師もいるようですが、目を見ることでその人が真実を言っているのか見極めます。このように考えると、人を見る目のある人は「人の目を見る目のある人」と言えるかもしれません。
情報を活かすも殺すも、受け止め方次第です。ネガティブな情報から自分の心を護り、より正確で必要な情報を取り入れることで、日々の生活を楽しくし、そして自分を成長させることができます。たくさんの情報を取り入れて、皆さんの心にポジティブな情報空間が広がることをお祈りしています。