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キャッチボールのコミュニケーション ~沈黙に耐えられる仲~
友だちを作りたい
新しい学年の人間関係には慣れましたか。「友だちを増やしたいけど、何て声をかけていいのかわからない」「話しかけられても、話を続けられない」などの相談を受けることがあります。「自分は“コミュ障”だから」とあきらめてしまう人もいますが、誰もが最初から上手にコミュニケーションができるわけではありません。
野球のキャッチボールも少しずつ練習していれば上達していくように、コミュニケーションも少しずつ練習していけば、“心のキャッチボール”を楽しめるようになってくるようです。
守備範囲を広げてみる
話しかけるのが苦手な人は、まず自分がキャッチャーになってみます。相手が投げたどんな球でも拾ってあげれば、相手はまた投げてくれるようになります。相手がボケたらつっこんであげたり、たとえ自分の知らない趣味の話でも、興味をもって聞いてみたりします。
相手の話がわからない、自分とは趣味が合わないと、決めつけるのではなく、自分が知らない話でも、好奇心を持って耳を傾けることで、その世界を広げていきます。
できるだけ守備範囲を広げて、友人が投げかけてくれた話(球)にダイビングキャッチしてみると、甲子園のファインプレーのように、コミュニケーションも盛り上がってくるでしょう。
とりやすい球を投げる
いろんなボールを取れるようになってきたら、今度は自分から投げてみます。いきなりストレートな冗談を言っても、相手が真に受けて傷ついてしまうこともあるかもしれません。いきなり変化球でユーモアを言っても、相手がキャッチできずにスルーされてしまうこともあるかもしれません。
まずは相手が取りやすい球を投げてみます。挨拶や宿題の話などとりとめもない話題から入り、少しずつやりとりに慣れてきたら速い直球や変化球を投げてみます。会話の内容も、一つの球種に磨きをかけるように、マニアックな話でコアな仲間を探すのもよいかもしれません。お互いに話のおもしろさを伝え合えるように工夫してみます。
沈黙に耐えられる仲
そうやって、心のキャッチボールを続けていれば、遠くから投げても、近くから投げても、あうんの呼吸でお互いの気持ちをキャッチできるようになってきます。
相手が拾ってほしい球、相手が投げてほしい球がわかるようになり、信頼関係ができてくると、体育祭や文化祭、部活動でもきっといいチームプレーができると思います。
そして、さらに信頼関係が深まってくれば、何かしゃべらなきゃと気を使わなくても、その場にいるだけで安心感を得られるようになります。たとえ沈黙が続いても気にならなくなってきます。いわば「沈黙に耐えられる仲がいい仲」と言えるかもしれません。
球のやり取りをしなくても、そばにいるだけでいい。そばにいなくてもいい。そんな友人関係を作れたら、やがて楽しくコミュニケーションが取れるようになってくると思います。