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 カウンセリングとは


挨拶は心の握手

 初めて中学校に来て印象に残っているのは学生たちの元気な挨拶です。その元気な挨拶を耳にすると、自分が中学生時代、下校途中の道路脇に「挨拶は心と心の握手です」と書かれた標語があったのを思い出します。挨拶は手を差し出さなくとも心と心が握手したように、人との信頼関係を築くものですね。

 挨拶は人との信頼関係を育むための第一歩となるものです。しかし、ときにはどうしても挨拶する気分になれない時期もあります。思春期に入ると、新たな自分の個性や特性を磨くために、自意識が高まってきます。自分は人にどう思われているんだろう・・・と今まで気にならなかったことが気になってきます。それに伴い様々な葛藤や緊張も生じてきますが、それをストレスとしてではなく、あらたな能力として引き出せたら、自分に自信を持てるようになってきます。・



鏡で見方を変えてみる

  そのお手伝いをするための一つの方法がカウンセリングです。みなさんはカウンセリングというとどのようなイメージをお持ちでしょうか。TVの影響もありさまざまなイメージをお持ちかもしれませんが、簡単に言うと、その人のリソース(眠っている能力)を引き出すお手伝いをすることです。短所と長所は表裏一体です。時として最悪の条件は最高の成果を生み出すことがあります。自分が欠点だと思っていたことが、発想を変えてみることで思わぬ力を発揮したり、長所をさらに伸ばすことで短所が気にならなくなってきたりします。

  例えば、ペットボトルにジュースが半分残っているとき、もう半分しかないと思うか、それともまだ半分あると思うか、それによってジュースの味わい方も違ってきます。友達と気が合わなくて悩んでいることは、それほど相手に気を遣って接してあげていることの表れです。毎朝学校に行こうか行くまいか悩むことがあるとすれば、それはたぶん物事を慎重に考える能力を持っているからです。そわそわ落ち着きがなくて歩き回ってしまうのは、行動力があるからでしょう。プラスの面に目を向けてみることで、それまでとは違った自分を発見できるようになります。

  カウンセリングはよく鏡に喩えられます。私たちは寝癖を直したり、身だしなみを整えたりするときには鏡を見るのと同様に、悩み事があったら他者にありのままの自分を話してみることで、気持ちを整理することができます。もちろん自分一人でとことん考えてみることも大切です。それが豊かな想像力を育むことにつながるからです。しかし、それが単なる思い込みであったら、ありのままの自分がわからなくなってしまうかもしれません。



ストレスと友だちになる

  ありのままの自分を見失わせる原因の一つに緊張やストレスがあります。人生は緊張との戦いかもしれません。緊張さえしなければもっといいプレーができたのに、緊張さえしなければ試験でいい結果が残せるのに、緊張さえしなければ笑顔で人と接することができるのに、緊張さえしなければイライラしなくて済むのに・・・。緊張は戦えば戦うほど大きくなってきます。その緊張やストレスが高まるのは「なりたい自分」と「なれない自分」に距離がある場合です。理想と現実との間のギャップが広がるほど、葛藤に苦しみ、素直な自分の気持ちがわからなくなってきます。 

 しかし、その緊張は決して嫌うべきものではありません。もし人間が全く緊張しない生き物だったらどうなるでしょうか。新入生の期待感や、初恋のドキドキ感、修学旅行の前夜に感じるワクワク感も緊張です。オリンピックの大舞台に立つ選手はまさに緊張との戦いです。緊張がただの不快感ならば、だれも金メダルに挑戦しようとはしないでしょう。そこには何らかの楽しみがあるはずです。ストレス学説を唱えた、H・セリエが「ストレスは人生における最良のスパイスである」と述べているように、ストレスがあることによって、それを乗り越えたときの感動や楽しさを味わうことができるのです。 

 カウンセリングはストレスと戦うのではなく友達になる方法を見つけるためのものです。緊張と友達になり葛藤状態がなくなってくると、緊張のハラハラドキドキからワクワクドキドキへ、不安から期待へと変わってきます。みなさんは日々どのような緊張を感じているでしょうか。カウンセリングはカウンセラーでなくとも友達同士でもできることです。相手の話をじっくり聴いた上で、新たな視点を提案してみると、お互いの魅力を引き出すことができます。友達同士で支え合いながら過ごした中学校生活はきっといい思い出になります。カウンセラーとしてその楽しい思い出作りをするお手伝いができたら幸いです。
 
 

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