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仲良くなる第三の道
部活動やクラス運営で友人との関係がうまくいかなくなったという相談を受けることがあります。人と人との意見がぶつかると、口もきかない冷めた関係になったり、逆に口論になったりすることがあります。そして、口論で決着できないと、大ケンカになって心も身体も傷つくことがあるかもしれません。国と国との関係においても、外交の交渉でうまくいかないと、大きな争いにまで発展してしまうことは歴史を振り返れば決して起きないとは言えません。
それぞれが生きてきた文化によって考え方や価値観は異なっており、ある方針や政策を決めるときは多かれ少なかれ意見がぶつかります。そのような時はどうやって解決すればいいのでしょうか。
政治って何?
そのように意見の違う人たちをまとめるためのものが政治です。社会学者の橋爪大三郎さんによると、政治とは「関係するすべての人を拘束する事柄を決定すること」だそうです。たとえば、1人で自由気ままにお出かけするときはいいのですが、デートはどこに行くか?家族旅行はどこに行くか?という場合のように、2人以上の集団行動をするときは、個々の行動に制限をかける必要がでてきます。言うまでもなく、それぞれの行動を拘束し制限しないと、集団行動ができなくなるからです。
そう考えると、部活動の方針を決めるときや文化祭でクラスの出し物を決定するプロセスも政治と言えます。学校でそのように皆さんの意見をまとめるのは学級委員や生徒会ですが、政治はみなさんの身近に存在しているわけです。
対話と討論
聖徳太子が十七条の憲法の第一条に「和を以て尊しとなす」と何よりも優先して「和の精神」が書いていますが、ここには何事も話し合いをすればうまくいくという対話の重要性が説かれています。
会議が長くだらだらと話し合った末に結論がなかなか決まらないという短所はあっても、相手の意見を尊重しようとする姿勢は昔からある日本人の長所と言えるかもしれません。ちなみに対話と討論の違いは、自分の主張が変わるのが対話(ダイアログ)であり、変わらないのが討論(ディベート)です。相手を打ち負かそうとする討論は時には「闘論」になる可能性があります。みんなが幸せになるような結論を生み出すには自分勝手な主張を控え、柔軟に意見を変えられる対話の姿勢が求められそうです。
第三の選択肢
あるカウンセリングの手法で「第三法」というのがあります。対立した両者の言い分をよく聞いて、第三の選択肢を探ることです。自分の意見だけを頑なに主張しても、関係はよくなりません。かといって、自分の意見を伝えずに我慢し続けてもどんどん誤解が広がってしまうことがあります。
平和をもたらす第三の道を探るためには、自由や権利を主張するだけではなく、多数派が正しいという発想だけではなく、自他を超えた美徳やより公共性のある結論へと導くための想像力や交渉力が必要になっています。
そして、その平和を維持するためのシステムがルールや法律になります。ルールなきボクシングはただのケンカであるように、ルールがあるからスポーツを楽しむことができます。私たちは法律や校則という束縛があるからその範囲内で自由を享受することができるわけです。
心地よい束縛をしてくれる学校や国のルール作りをするには、自分の要求ばかりするのではなく、より長い歴史、より広い視点に立って、考えていく必要があります。そのためにも歴史や国語、英語をたくさん勉強し、日々の生活で想像力や交渉力を磨きましょう。友達とケンカしてどうしても関係を修復できなかったときや、第三法の具体的なやり方を知りたい方は、相談室までお越しください。