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相談室便り バックナンバー3

 辛い別れはいい出会い

  こんにちは。冬休みが終わり、早いもので、あと数ヶ月で春休みですね。1,2年生はクラス替え3年生は卒業です。そして、卒業の前には受験が控えています。クラス替えや卒業にあたって、春になると慣れ親しんだ学校やクラス、友人とお別れしなければなりませんが、みなさんは残りの数ヶ月をどのように過ごしますか。
        
                                        
対象喪失とは

 人生には別れと出会いがつきものです。事情により家族と一緒に暮らせなくなること、やさしくしてくれたおばあちゃんが亡くなること、または、希望、財産、名誉、若さ、健康、命を失うこともあります。そのように慣れ親しんだものを失うことを「対象喪失(たいしょうそうしつ)」と言います。テストの点数が下がることや、希望校に入れないことも対象喪失と言えるかもしれません。
 そのような体験をすると、心にぽっかり穴が空いたようにむなしさ、さみしさ、悲しみを感じ、心に傷がついたように胸が痛むことがあります。私たちはそのような出来事に対してどのようにのぞめばいいのでしょうか。
 

心の鎧をまとう

 ある人は心の痛みを感じないようにするため、言い分けをしたり、否認したり、相手のせいにしたり、何かに逃げたりします。TVゲームやインターネットなどの仮想現実の世界に逃げる人や、自分の部屋に引きこもる人もいます。大人だってお酒やギャンブル、食べ物、買い物などで心に空いた穴を埋めようとします。それを精神分析学では、「心的防衛のメカニズム」と言います。
 いわば、“心の鎧(よろい)”を身にまとうようなものです。自分の心が傷つかないようにするために心の鎧を着るのです。しかし、鎧を着て戦い続けていると、やがて鎧は厚く重たくなってきて、気持ちまで重く沈みがちになることがあります。
 

心の鎧を脱ぐ                        
 
 そのようなときは、心の痛みを感じなくするのではなく、逆にとことん味わってみることも大切です。鎧を着ることで一時的に気をまぎらわせることはできますが、根本的な解決にはなりません。心の痛みをじっくり味わうことで、そこからメッセージを受け止めることができて、自然と気持ちがやわらいできます。
 確かに痛みを味わうことは苦痛を伴います。できることなら味わいたくはありません。だからこそ、人に相談したり、友人同士で支え合う必要があります。ときには心の鎧を身にまとうことも必要です。それは自分を守ってくれるものだからです。しかし、それを続けていると疲れてしまいます。ときには鎧を脱いで休んでみることが必要です。鎧を脱いでみることで心が軽くなり、素直なありのままの自分の気持ちを表現できるようになるからです。
 

人の気持ちがわかるようになる

 カウンセラーという仕事をしていると、「私が何を考えているのかわかるんでしょ?」と聞かれることがよくありますが、カウンセラーでなくても人の気持ちを察することができる人はたくさんいます。人の気持ちをくみ取る能力は、カウンセリングの技術を学ぶことで身につくわけではありません。
 私は人の痛みを感じることだと思っています。人の痛みを感じることが、カウンセリングで言う「共感能力」です。相手の話を一生懸命聞いていると、胃がチクチクしたり、胸が苦しくなったりしますが、それを乗り越えたときに感動を共有することができます。そして、人の痛みを感じることで、命の大切さも感じられます。


友だちができる、仕事ができる人になる
 
 人の痛みがわかると、人の気持ちがわかるようになります。友だちの気持ちがわかると、楽しく付き合うことができます。そして、大人になったときにはいい仕事ができるようになります。優れた営業マンは相手のほしいものがわかります。優れた料理人はお客さんが食べたい味がわかります。優れた職人は相手が作ってほしいものがわかります。相手が求めているものにこたえられる人が仕事のできる人です。「優(すぐ)れる」という字は「人」の「憂(うれ)い=悲しみ」、「優しい」とも読みます。人の痛みがわかる人が本当の意味での優れた人なのではないでしょうか。


つらい別れはいい出会い                   

 春は出会いと別れの季節です。失うことも多いでしょう。しかし、あえてそこでは、つらい別れをしてみて下さい。友人と別れる苦しさや心の痛みをじっくり味わってみて下さい。卒業式ではいっぱい泣いてみて下さい。別れが辛いということは、それだけすばらしい出会いをしたということです。つらくない別れをすることの方がさびしいかもしれません。つらい別れができるように残りの数ヶ月で、たくさんの素敵な思い出を作って下さい。

 

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