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不安な情報と向き合うには ~心の天秤でバランスをとろう~
不安になるとき
新型コロナウィルスの拡大に伴い、休校が続いておりますが、皆さんはどのように過ごしていますか。自宅にいることが増え、メディアに触れる時間が増えてくると、注意喚起を促す情報をよく耳にします。感染予防のための重要な情報が発信されているので、学ぶことも多いですね。
しかし、報道の仕方によっては、おどろおどろしい効果音や冷ややかなナレーションによる演出がなされ、視聴者の耳目を集めるために必要以上に不安をあおられてしまうことがあります。
スーパーで空になった棚の映像を見て不安になり、食料品の買い占めが起きたり、重症で苦しむ方の映像を見ればその疑いがあるだけで心配になり、病院に駆け込みたくなったりするかもしれません。しかし、不安にかられて衝動的に行動する人が増えれば、偏見やパニックにつながる恐れもあります。
違う角度からも見てみる
偏見やパニックを防ぐには、異なる情報や安心できる見方など違う角度からも考えてみることが必要になります。たとえば厚労省のHPを見ると、例年、季節性のインフルエンザの感染者数は国内で1000万人、そのうちの関連死が1万人にも及んでいます(致死率0.1%)。また、肺炎による死者数は年間およそ10万人になります。
一方で、新型コロナウィルスの致死率が2%だとしたら、感染者を50万人に抑えられたら、インフルエンザと変わらない死者数になります。政府は今後8万人の感染者数を想定していますが、そのうちの2%の方が亡くなられたら死者数は1600人です。今現在、コロナによる関連死の数は80人ほどですが、例年の季節性インフルエンザによる死者数よりも少なくなる可能性もあります。
心のバランスを取ろう
不安はいわば“心の警報器”です。不安という警報音があるからこそ、対処行動ができます。しかし、必要以上に不安になることで、軽症の方まで病院に殺到すれば、感染拡大と医療崩壊につながってきます。逆に、安心し過ぎて遊び歩く人が増えたら、それもまた感染拡大につながるでしょう。
不安なときほど白黒はっきりさせたくなり、極端な考え方や行動に走ってしまうことがあります。ですから、不安なときほどあえて灰色の曖昧さを受け入れてみること。楽観するのでもなく悲観するのでもなく中立的な立場を取ることが必要なのかもしれません。
そうやって、異なる情報や考え方を天秤にかけながら吟味し、バランスを取ることができれば、不安と安心のバランスも取れるようになってきます。心のバランスを取ることによって偏見やパニックを防ぐことができれば、必要な人に必要なものが行き届きやすくなります。そして、何よりもより多くの人の命を救うことにつながるのかもしれません。