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頑張らない勇気 ~頑張らなければ頑張れる~
頑張るのはよいこと?
一生懸命頑張っているのに、空回りしてしまったり、燃え尽きてしまったりするという相談を受けることがあります。頑張ることはよいことですが、頑張り過ぎることで逆に頑張れなくなってしまっては元も子もありません。そういうときは頑張り方をひと工夫するといいかもしれません。
そもそも、頑張るというのは、どことなく頑(かたく)なで、気を張っている状態を表しています。頑張っている状態はいわば緊急事態です。その緊急事態が長引いて、どこかに無駄な力が入り続けていると、ストレスからくる肩こりや頭痛、腹痛、さらにはうつ状態にまでなってしまうことがあります。
逆に力を抜き過ぎればだらけてしまいますので、緊張とリラックスを上手に切り替えながら、ほどよい力を出せれば、燃え尽きることなく頑張り続けることができます。そのような柔軟性があると、困難な状況でもしなやかに適応し、ストレスを跳ね返すことができます。それを心理学ではレジリエンス(回復力)といいます。
頑張る根底にあるもの
頑張るという言葉には、困難にめげずに我慢してやりぬくという意味があります。そこにはやりたくないことをやるという、どこか無理をしているニュアンスが感じられます。
そのように無理をしなければならない背景には、今のうちに頑張っておかないと将来仕事につけないかもしれない…。頑張り続けないと人から評価されないかもしれない…。といった将来不安や見捨てられ不安のようなものが見え隠れしているようです。
そのような不安や恐怖が頭の片隅にあると、常に何かに追われるように頑張らざるを得なくなり、心が休まらなくなってきます。そうした不安やプレッシャーはどうすれば乗り越えらえるのでしょうか。
もし頑張らなくてもできたら…
反対に、頑張らなくてもできることは何でしょうか。それは、好きなことや楽しいこと、やりたいことをやっているときです。一流のスポーツ選手が大舞台でも楽しもうとするのは、その方がプレッシャーを乗り越えやすく、最大限の力を発揮できるからでしょう。
たとえば、ゲーム好きの子どもが時間を忘れるほど没頭しているときは、決して頑張ってはいません。ただ楽しいから夢中になってやっています。スポーツにおいても、競技に夢中になって取り組んでいると心地よい状態になることがあります。
それは「ゾーン」に入った状態と言われており、心理学では「フロー(流れる)」と言います。勉強もひたすら集中して取り組むことを楽しめたら、大きな成果につながります。部活や受験で成功するかどうかは、このゾーンやフローの状態に入れるかどうかで左右されるといっても過言ではないでしょう。
頑張らなければ頑張れる
勤勉さは日本人の美徳であり、強みでもあります。しかし、努力と根性の中に合理性がなく成果が出ないのならば、無駄なエネルギーを使っている可能性があります。
フローの状態にもっていくコツは、身の丈に合った目標を持ち、今ここでのプロセスに注目しながら、心(思い)と身体(行動)が一致した状態で取り組むことです。あるがままの自然体で、目の前の課題にひたすら集中していきます。
もし頑張らなければならない根底に不安や恐怖があり、何かに追われるように頑張っているのだとしたら、お化け屋敷やジェットコースターを楽しむように恐怖を娯楽にしてみます。また、そのプレッシャーを乗り越えたときに得られる夢や楽しみを見出せれば「頑張らなければならない」が「頑張りたい」に変わってきます。
そうやって頑張らないで楽しむことができければ、今まで以上に頑張れると思います。そんな頑張らない勇気を持てるように頑張って下さい。