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いじめの連鎖を断つには
なぜいじめが起きるの?
「いじめ」というのがありますが、みなさんはいじめを見て見ぬふりしたり、いじめの加害者や被害者になったりしたことはありませんか。いじめは学校だけではなく大人の社会でもありますが、人と人があるものでつながることで起きます。
それは「恐怖」によるつながりです。恐怖やストレスを感じた時に、人に恐怖を与えて従わせようとしたり、自分のストレスを人に押し付けたりすることで、他人を巻き込み支配する関係でつながっています。
たとえば加害者自身がかつていじめの被害者であったなど心の傷を抱えていたり、コンプレックスが強くて自尊心を傷つけられるのを恐れていたりと、何らかの恐怖心を抱いています。また、日常生活でストレスがたまっていて、そのはけ口として弱いものに向けて発散しようとします。つまり、恐怖やストレスによる精神的な弱さを抱えているので、自分よりも弱いものを見つけて優越感を得ようとします。
権威主義的人格
自分よりも強い人にはこびて自分よりも弱い人には偉そうにする人、権威のある人には従って権威のない人には権威を振りかざす人のことを心理学では「権威主義的人格」といいます。心理学者のE・フロムによると、ナチスのヒットラーによる独裁体制ができる背景にはこのような人格の存在が挙げられています。
権威主義的人格が増えると、マイノリティ(少数派)の人に対するいじめや差別が起きやすくなります。自分の弱さから強い者の傘の下に入り、多数派に回って気が大きくなると弱者を排除しようとします。このような関係においては、「いじめの連鎖」が続いていくようになります。
強がりたいのか?強くなりたいのか?
このように考えると、いじめをする人はもともと精神的な弱さを抱えている人の可能性が高いのです。コンプレックスを克服している人や自分の弱さを乗り越えた人はいじめることで強くなろうとはしません。
強がって自分の弱さをごまかしたいのなら、自分よりも弱い人を探して力を行使すれば強くなった気になれます。弱い者いじめをする人は強がって虚勢を張っているだけで、内心は恐怖におびえており、それを隠すために強くみせようと振舞っているのです。強がりたいのか、強くなりたいのか。自分がもっと強くなりたいなら自分よりも強い人に挑むこと、自分の中にある恐怖と向き合うことです。
いじめの恐怖を乗り越えるには
いじめの恐怖におびえてまた弱い人を見つけていじめてしまうことで「いじめの連鎖」が起きますが、恐怖と向き合えた人はいじめの連鎖を断つことができます。人に恐怖を与えることで解消しようとするのではなく、自分の中にある恐怖と向き合って乗り越えるのです。
恐怖は取り除こうとすればするほど、心に中に留まります。戦えば戦うほど恐怖は増大していくのです。むしろ、恐怖をあるがまま受け入れて、リラックスして緊張をやわらげていくと少しずつ恐怖を受け流すことができるようになります。
恐怖心を克服する秘訣は「戦わずして勝つ」です。武道の達人と呼ばれた塩田剛三は合気道の極意について「殺しに来た相手と友達になること」と述べています。恐怖とお友達になって信頼感や安心感が育めると、恐怖は自然に軽減し、離れていくようになるでしょう。
いじめは閉鎖的な環境で起こりやすいです。もしいじめを見つけたら、風通しをよくして白日の下にさらすのが一番です。いじめで困ったときは先生やカウンセリング室までご相談ください。