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嫌な気持ちでいられる力 ~心の器を大きくしよう~
ストレスに敏感な社会
セクハラ・パワハラといったハラスメント(嫌がらせ)が連日メディアをにぎわせていますが、皆さんは学校生活で嫌な気持ちにさせられたことはありませんか。ハラスメントは決して許されるものではありませんが、今の世の中はそんなに嫌がらせをする人が増えたのでしょうか。
少年犯罪はここ10年で1/3に、殺人の認知件数も昭和30年頃に比べて、1/3にまで減ってきています。危害を与えられることで、身体の傷を負い、命を失うような確率は着実に減ってきています。
その一方で、虐待の相談件数は増える一方ですが、その内訳は身体的虐待より心理的虐待の方が多くなり、今では過半数を占めるようになりました。つまり、それだけ身体の傷よりも心の傷に敏感になってきたと言えるかもしれません。
加害者になる不安
心の傷に敏感になってくると、今度はこんなことを言ったら相手が傷つくのではないか?相手から訴えられるのではないか?という自分が加害者になる不安が高まってくることがあります。
しかし、そこで言いたいことを我慢して自分の気持ちを抑えつけてばかりいれば、それはそれでストレスがたまってきます。相手に直接気持ちを伝えられないので、間接的にネット上や陰口で発散しようとする人も目立ってきます。お互いが傷つくことを恐れて、争いごとを避けるのは必ずしもいいことばかりではないのです。
言いたいことが言えない風潮は、それはそれで生きづらい社会になってきます。争いごとを避けるのではなく、争いを乗り越える力が今求められています。
ストレス耐性とは
ちょっとした嫌なことに対して過敏に反応し、それを受け入れられないことは潔癖症の心理に通じるところがあります。小さな汚れが気になって、それを取り除こうときれいにすればするほど、さらに小さな汚れが気になってきます。嫌なことばかりが目につくことで、すべてが嫌なことだらけに思えてしまうのです。
ストレスに耐える力を「ストレス耐性」といいますが、ストレス耐性を身につけていく上で大切なのは、そのようなストレスを取り除くことではなく、ストレスを受け入れる力を身につけることです。
「耐性」は英語で「トレランス(tolerance)」と訳します。そのトレランスは耐性という意味の他に「寛容さ」という意味もあります。つまり、ストレス耐性というのは耐える(我慢する)ことだけではなく、寛容な気持ちで受け入れられる力のことを言うのです。
嫌な気持ちでいられる力
嫌な気持ちになったときには、過敏に反応して、それを排除しようとするのではなく、逆に嫌な気持ちを認めて、そっと寄り添ってみます。そして、嫌な気持ちを受け入れる心の器を大きくしていきます。
不安や恐怖などのストレスは戦えば戦うほど大きくなってきます。心の器が小さければすぐにあふれてしまいますが、心の器が大きくなれば嫌なことはだんだん気にならなくなってきます。
心の器を大きくするコツはリラックスすることです。ふっ~とゆっくり息を吐いて、肩の力を中心に身体全身の力、さらには内臓の力を抜くことで肝がすわってきます。重心をお腹や足元に落とすことで頭を軽くします。そして、心の器が大きくなっているイメージを持ちます。
心の器が大きくなってくれば、だんだん嫌なことが気にならなくなり、自分の好きな事ややるべきことに目を向けられるようになるでしょう。そんな嫌な気持ちでいられる力を身につけて、ストレスに敏感な生きづらい社会を、ストレスに寛容な生きやすい社会に変えていきましょう。