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自分の身体に聴いてみよう
新学期が始まりましたが、みなさんいかがお過ごしですか。長い夏休みが明けると、学校生活が新鮮に感じられますね。夏休み中、冷たい物を飲みすぎてお腹がゆるんだり、リラックスして気持ちもゆるんだりしていませんか。しばらくゆったりした生活が続いたあとに環境が変わると、ストレスを感じやすくなる場合があります。夏休みの思い出を秘めながら、また楽しい学校生活を過ごすために今回はストレスを感じたときの対処法、ストレスと友達になる方法について考えてみたいと思います。
心はどこにある?
人はストレスがたまると、気分が落ち込んだり、イライラしたりするとともに、眠れない、食欲がない、お腹が痛い、息苦しいといったような身体症状を表してきます。言葉でうまく気持ちを表現できずにいると、たまったストレスは身体症状として訴えるようになります。
例えば、ストレスで胃がシクシクしたり、チクチクしたりするのは、胃が泣いたり、怒ったりしている状態と言えます。昔から気持ちは、身体、特に内蔵で表現されています。「胸が高鳴る」「胸をはずませる」「胸が痛む」「胸が張り裂ける」「胸騒ぎがする」「腹が立つ」「腹黒い」「腹を割って話す」「腹を抱えて笑う」「腹をさぐる」「断腸の思い」など、気持ちを表現するときは、頭で考えて発する言葉だけはなく、身体全体、特に内臓で表現することが多いのです。そう考えると、内臓にも心があるのかもしれません。
ストレスがたまる理由
そのような身体で感じたストレスを、頭で考えて意識的に取り除こうとしても、なかなか取り除けるものではありません。頭で考えていることと、実際に身体で感じていることとのギャップが大きくなればなるほど、ストレスはたまっていきます。
つまり、ストレスがたまりやすい人は、頭だけで問題をとらえて、身体のサイン(身体症状)に鈍感になっていると言えます。身体は悲しいと感じているのに、頭でそれを押さえつけて明るく振舞ったり、怒っているのに、怒っていないふりをしたりとそうして自分の本来の気持ちを歪めてしまっているのかもしれません。
自分の身体に聞いて見よう
そんなときは身体のサインを受けとめてみて下さい。カウンセリングではフォーカシングという技法があります。フォーカシングは自分の気持ちと上手に付き合うための方法です。ゆったりと深呼吸をして身体を楽にし、自分の悩んでいることや気になっていることを身体のどのあたりで感じるか、そこに注意を向けてみます。胸やお腹のあたりだとうまく感じられる人が多いようです。
そして、その感覚をじっくり味わい、挨拶をしてみたり、話し掛けてみるような感じで、色や形、重さ、手ざわりなどのイメージを広げ、あるがままの感覚を認めてあげます。その感覚と距離を置いてみることで問題を客観的に見つめ、気持ちを整理することもできます。また、身体からのメッセージを受け取ることで、自分の素直な気持ちに気づくこともできます。
身体の感覚を大切にしよう
マリナーズのイチローが何年か前にTVのインタビューの中で、「頭で練習しようと思っても、身体がしたいと思わなかったらしない」というような話をしていました。そして、好きな言葉は「自然 体」とも言っていました。イチローは身体の感覚を大切にし、あるがままの自然体でいることで無意識の力を発揮し、大きな記録を残すことができたのかもしれません。もちろん頭で深く考えることは大切です。とことん深く考えてみることが自分を大きく成長させてくれます。
しかし、考えすぎて悩んでしまったときには、自分の胸(腹)に聴いてみて下さい。そのために、日頃、私たちにできることは、体をいたわることです。暑い日に冷たい飲み物を飲みすぎて、お腹を壊すことがあるのは、飲みたくないという身体のサインを無視していたからかもしれません。身体をいたわることが心をいたわることにつながります。何を食べたいのか、何がしたいのか、身体のサインをキャッチして、より美味しく実り豊かな秋を過ごしましょう。