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気持ちが通じ合う国語力 ~SNSで誤解されないために~
SNSのトラブル
皆さんの友人関係はうまくいっていますか。友人関係が楽しいと学校生活も楽しくなりますよね。しかし、楽しい友人関係に水を差すものに、ツイッターやLINEなどSNSにまつわるトラブルがあります。全く悪気はないのに、自分の思いとは裏腹に、誤解が生じることで関係が悪化してしまったことはないでしょうか。
それは主語や目的語がはっきりせず、誰が誰に何を伝えたいのかがわかりにくい文章であったり、思いつきで書き込んでしまったりしたときに起こるようです。
言葉にしなくても通じ合えるくらいの以心伝心の間柄の人もいるかもしれませんが、親しい間柄だから何でもわかってくれるだろうと相手に期待し過ぎてしまうと、かえって誤解が生じ、お互いの心を傷つけてしまうことがあります。
誤解が生じる文章
そのような誤解はどうして生じるのでしょうか。言うまでもなくSNSは気軽にメッセージを送れる分、衝動的に、感情的に、手短に書いてしまうことがあるからです。
よくあげられる例として、「何で来るの?」と交通手段を聞いたつもりでも、相手はどうして(あなたが)来るの?と理由を聞かれたように受け止めてしまい、嫌がられていると誤解してしまうことがあります。あるいは、「面白くない?」と共感を求めて書いたつもりでも、?マークを付け忘れてしまえば面白くないと相手のことを否定しているように伝わってしまうこともあります。
短くて主観的な文章は相手とのあうんの呼吸で心の距離を縮めてくれることがありますが、逆に仲を悪くさせてしまうことがあるわけです。
誤解しない読解力
一方で、相手の文章がわかりにくいときでも、何を意図して書いているのか、読み取る力が必要になります。数理論理学者の新井紀子氏は、最近の子どもたちの読解力が落ちていることを指摘し、なおかつ人工知能の時代において、人工知能が苦手な読解力を身につけることが大切であると述べています。文章から気持ちを読み取る力は、これからの時代、人工知能に仕事を奪われないような能力を身につけることにつながるかもしれません。
そして、それはなぜ国語の勉強をするのかという問いにもつながってきます。国語はコミュニケーション能力をつけるためと言ってもいいと思います。国語のテストは主に紙上で測っているので、すべてのコミュニケーション能力を測れているわけではありません。しかし、誤解させない作文力と誤解しない読解力が身につけられるようになれば、コミュニケーションはより豊かになってくるでしょう。
誤解を和解、正解に変えるには
国語の読解問題は解答者(自分)の視点だけではなく、著者や出題者、つまり客観的な他者の視点で読み解くことが必要になります。自分がどう思ったかではなく、出題者が何を問いかけているのか読み取ることです。また、感想文や作文は自分の思いをどうすれば人に伝えられるか、読み手を意識して書くことが求められます。
主語や目的語があいまいで言葉足らずな文章は、自分と他人の境界線もあいまいになるので、ストレスがたまっているときほど知らず知らずのうちに相手を巻き込んだり、傷つけてしまったりするのです。
SNSで自分の思いを発信するときも、国語の問題文を読み解くように、あるいは作文を書くときのように、自他の境界線を引いたうえで相手の立場になって文章を読み書きしてみます。そうすると、友人との間に生じていた誤解が和解になり、国語の問題はより正解につながってくると思います。自分が何を書きたいかではなく、相手が何を書いてほしいのか、相手の立場になって読み書きできたら、もっとSNSを楽しめるのかもしれません。