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ネットいじめと現代の魔女狩り
魔女狩りって何?
近年、SNSを使ったいじめやトラブルが話題になることがあります。SNSやインターネット上では一部の人をバッシングしたり、仲間外れにしたり、デマが広がったりするなどの有害性が指摘されていますが、昔はこのようなことはなかったのでしょうか。
たとえば、中世のヨーロッパでは「魔女狩り」というがありました。何の罪もない人たちが、魔女として捉えられ、火あぶりの刑にさらされたのです。「宗教の違いのために迫害された」「嫌っている人を追放する口実として流行した」「医学がそれほど発達していなかった当時に、伝染病の患者が呪われているとみなされた」など諸説ありますが、根拠がなくても集団心理が働くことで、濡れ衣を着せられて死に追いやられてしまった人がいます。
炎上というキャンプファイヤー
それは遠い昔の遠い国の話ではなく、現代の日本においても、根拠のないデマによって無実の人が犯罪者扱いされたり、いじめのターゲットになってしまったりすることがあります。
現代の魔女狩りはSNSやインターネット上で起こりやすくなります。特定の個人をバッシングすることをネット用語では「炎上」や「祭り」と言われていますが、まさに魔女を火炙りにして生贄にするキャンプファイヤーをしているようなものかもしれません。
連帯感や非日常を味わいたくて、自分にとって都合の悪い人をネット上で追いやったり、いじめたりすることは、毎日が面白くない人、ストレスがたまっている人などが火付け役になっているようです。
情報を見極める
そのようなデマによる「炎上」や「祭り」に参加しないためには、なるべく生の情報に触れること、疑うことと信じることの両方の視点を持つこと、2つ以上のストーリーを聞くことです。そして、何よりもたとえ孤独であっても、真実と向き合う姿勢を身につけることでしょう。
デマを鵜呑みにする人は周囲に流されやすい人です。民主主義イコール多数決だと思っている人もいますが、いじめをする人が多数派になったらいじめが正しいことになってしまいます。魔女狩りを例に出すまでもなく、多数派が必ずしも正しいと限らないことは歴史が証明しています。
たとえ自分が少数派だったとしても、権威や周囲に惑わされず、正しいと思ったことは声を大にして「王様は裸だぞ」と言えるだけの情報を見極める目を養いましょう。
SNSは人をつなぐ道具
ネガティブな情報にとらわれ、そればかりがクローズアップされてくると、不安や不信感は増大していきます。ネットは世界を広げる上で便利な道具ですが、逆に閉鎖的な情報空間に飲み込まれてしまえば、デマを信じ込んでしまう危険性を持っています。
それでも、SNSは危険性より可能性を持っています。同じような趣味や夢を持っている人をつなぎ、様々な価値観を持っている人とのたくさんの出会いがあります。ナイフと同じように使い方によっては人を傷つける道具にも便利な道具にもなります。正しく使えば人と人をつなぎ、多くの人の心の傷を癒す道具にもなるわけです。
魔女狩りのような悲劇を繰り返さないためには、ネガティブな情報に惑わされず、ポジティブな情報を増やしていくことです。ネット上には今を嘆く愚痴よりも未来を開く主張をしましょう。
その中で信頼の輪が広がると、特定の個人をバッシングする「祭り」ではなく、文化祭や体育祭のようにみんなで助け合うことで感動できる「祭り」になると思います。