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無知は無恥、賢者は謙虚
プライドの高さ
だんだん手足が冷える季節になってきましたが、気持ちまで冷えてしまうことはありませんか。勉強や部活動への情熱が失せて、燃え尽きてしまったという生徒の相談を受けることがあります。
そのような状態になる原因の一つとしてはプライドの高さを挙げることができます。プライドが高すぎると、困ったとき人に相談できず、一人で抱え込んでしまうことで、心の荷物はどんどん重くなってきます。やがて、その重さに耐えられなくなったときに燃え尽きてしまうのです。
人を頼らずに頑張るプライドは大切ですが、そこに無理があると逆に頑張れなくなり、返って人に迷惑をかけてしまうこともあります。やる気を高めるにはどのようなプライドを持てればいいのでしょうか。
落ち込むのは傲慢?
たとえばテストの結果が悪いとき、プライドが傷つくのでその結果を見たくないし、誰にも見せたくないことがあるかもしれません。しかし、あるがままの現実を受け入れられないと、次のステップに進むことは難しくなります。
気分の落ち込みは理想と現実の落差から起こります。失敗して落ち込むというのは裏を返せば、自分はもっとできるはずだ、できなければならないという高い理想があり、そこには傲慢さ(ごうまんさ)が見え隠れしているのです。傲慢になると、小山の大将になってしまい、見えている世界がだんだん狭くなってきます。
できない自分を認める
もっとできる自分になるためには、まずはできない自分を謙虚に受け入れ、身の丈に合ったハードル設定をすることから始まります。自分の欠点を冷静に分析することによって、弱みを強みに変えることもできます。
できない自分を認めるのは勇気がいるかもしれませんが、そこで、心が傷ついたり、落ち込んだりしても、心の荷物が軽いうちなら受け入れやすくなります。
そして、自分の弱いところをじっくり感じて、自分の気持ちと向き合ってみます。そうすると、悲しさや悔しさ、憤りなどの感情が出てくるようになり、だんだんやる気が湧いてきます。
謙虚さが賢くする
ギリシャの哲学者ソクラテスは「無知の知」を説きました。自分が何も知らないことを知っている方がそれだけ賢いというのです。賢い人はテストの点数や知識をひけらかしたりせず、謙虚に学ぶ姿勢があるということです。
「井の中の蛙大海を知らず」と言うように、井戸の中の蛙になってしまうと、世間知らずで小さな世界しか見られなくなります。知らないことが恥ずかしいのではなく知ろうとしないことの方が恥ずかしいわけです。大海に出れば自分よりすごい人をいくらでも目にすることができます。そこで、尊敬できる人を見つけられるとまた謙虚になれます。
自分ができないこと、自分が何も知らないことを謙虚に認めることで、大海へと船出することができます。世界が広がるとたくさんのことを知ることができて、その結果、本当の意味で賢くなれるのだと思います。できない自分を認める勇気を持って、冷めた気持ちにまた火をつけてみましょう。