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損得から尊徳へ
ここの所、政治家や経営者のお金にまつわる失敗談をニュースで耳することが多いですが、中学生の皆さんはどうお考えでしょうか。生きていくにはお金は必要ですよね。ただお金に目がくらんでく ると、自分の心まで見失ってしまうようです。どうすれば心もお金も豊かになるのか、今回はその関 係について考えてみたいと思います。
執着心がありすぎると・・・
ストレスを抱えているときは、何かに執着しているときです。いくらたくさんお金があっても、いくら高い地位を得ても、悩みはつきません。高い目標をもつことは結構ですが、理想と現実にギャップがあるほど、不安や葛藤はついてまわります。特にそれが自分本位な欲求だと、執着心はますます強くなってくるようです。
近年、自分の利益ばかりを追求することで、インターネットや介護、株取引の業界で失敗した社長さんを多く目にするようになりました。一時的にお金持ちになっても、そう長くは続かないようですね。
お金と元気をためるには
一方、経営がうまくいっているある社長さんに、事業に成功する秘訣は何か聞いてみると「積徳」だと言っていました。積徳というのは、「徳」を「積む」ことです。徳とは「人としてのいい行い」のことです。つまり、どれだけ人を喜ばせたか、どれだけ人の役に立てたか、が自分の幸せにつながってくるというのです。
また、ある東洋医学の先生に「気(エネルギー)」をたくさん取り入れる秘訣は何か聞いてみるとまず自然に親しむこと、そして、何よりも人のためにエネルギーを注いでいる徳のある人ほど、気の流れがよく、やがて気が自分に返ってきて、さらに元気になるといいます。
損得から尊徳へ
つまり、成功した人は「徳」を、失敗した人は「得」を追求していたと言えるかもしれません。自分が得するか損するかではなく、他人への思いやりを判断基準にしている人ほど幸せになれるようです。確かに他人を無視して、自分の損得ばかり考えている人は、人から感謝されず、恨みを買うことも多いでしょう。
江戸時代の二宮尊徳(金次郎)という人は、自分の利益や幸福を追求するのではなく、この世のすべてに感謝し、これに報いることが、自分と社会のためになると説き、たくさんの村おこしをしてきました。また、石田梅岩という人は、商売で得た利益は自分のためだけではなく、世の中のためになることが大切であるという商人道を説きました。日本が経済大国になれたのは、一人ひとりが家族や会社、社会のために奉仕し、アジアの国々にもたくさんの援助をしてきたからかもしれません。
一日一善
「情けは人のためならず」や「金は天下の回り物」ということわざがあります。情もお金もめぐりめぐって自分に返ってくるという意味です。ただ、自分のためだけにお金や愛情を注いでいると、そこで滞ってしまい、循環が悪くなるようです。
このような大きな視点でお金や心をとらえられるようになると、執着心もやわらぎ、少なくとも自 分のためだけに悩まなくてすむようになってきます。悩んでいるときは、ほんの少しでいいから、遠い国で貧困に苦しむ人のこと、近所で困っている人のことを考えてみて下さい。そして、一日一善、徳を積むことで、悩み方もちょっと変わってくるかもしれません。そこに自分と社会を元気にするヒントがありそうです。